• 国際映画祭公認フォトグラファー
    若山和子が語る、写真を撮るということ

    カンヌ・ベルリン・ベネチアの3大映画祭に10数年来参加している、唯一の日本人フォトグラファーが日本に帰ってくる!20年近くも暮らしたパリを離れ、なぜ日本に活動拠点を移すのか。その胸中を語っていただいた。

     

    若山和子

     

    異国は何10年住んでも日常にならない
    Kazuko Wakayama 若山 和子20代でアメリカとフランスに留学し、フリーのカメラマンになって約20年。ずっと海外で頑張ってきたんですよね。それで人生を振り返ってみると、私は20年ごとに区切って生きてきたみたい。20代まで日本で暮らして、その後の20年は海外でチャレンジする毎日。だから次の20年は日本でキャリアを重ねたい、そう思ったんです。
    考え始めたのは6年ぐらい前から。ふつふつ沸いてきた感情に、抑えがきかなくなりました。「日本に帰りたい! 日本に帰りたい!」って。やっぱり20年住んでいても、私にとってフランスは外国でしかないんです。毎日歩いている路地も、家族が住む家も、日常だけど日常じゃない。自分の中に絶えず香辛料が入ってくるような感覚を持ち続けているんです。それは刺激になることだし、日本では絶対にできないこともある。毎日が切磋琢磨なんだけれど、それって自分の帰る場所ではないということ。では、この先自分がどこに進んでいこうかと考えた時、自然と日本に帰るという選択ができました。今なら、20年前の自分にできないことができる。それはとても豊かなことだと感じたんです。

     

    日本は人の魅力に溢れている
    海外で暮らしたことで気づけたことはたくさんありました。例えば、日本はとても魅力的な国だということ。他の国にはないものがいっぱいあります。哲学や論理、人々の信頼関係や生き方そのもの。絶対にフランス人に真似できない“あうんの呼吸”。空気を読んで敢えてやること、言わないこと。これはフランス人もアメリカ人もできない。例えばフランス人は、敢えて相手と反対側の立場をとって意見を対立させながら人間関係を構築していくんです。でも、日本人は敢えて相手側に沿った考え方をしながら妥協点を探していく。他にも外側から見ているうちにいろいろ日本の良さを認識していく自分がいて……。いつのまにか「日本ファン」になっていました(笑)。私はどうしても、微妙で風船のような空気がないと生きていけない。写真もそんな見えない部分を写し出す世界だから好きなのかもしれません。

     

    離れていても「映画」という世界で繋がっている
    Kazuko Wakayama 若山 和子私は「悩んでいるうちは行動しない」ことにしています。思ったらすぐ行動するというより、機が熟すまで待ってしまうんですね。すると機会が自然とやってくる。実は私、就職浪人していたんです。映画関係の仕事に就きたいと思いながらも、無理だろうなと思っていて他の企業も自分の中でピンとくるものがなくて、結局その年の就職活動はしなかった。でも、その翌年、当時200倍といわれた難関の配給会社、日本ヘラルド映画に就職できたんです。この会社で学べたことは大きかったし、人生の宝となる出会いをしました。人間関係が密で、血肉を分けた親戚同士のような人ばかりが集まった会社。大物プロデューサーの原正人さんが社長をされていたヘラルド・エースに出向という形で配属されました。入社して2年後、カメラの勉強をするために退職したんですが、ヨーロッパで仕事をするきっかけをくれたのも、この会社でした。ちょうどパリの美大に通っていた時、「カンヌ映画祭でデヴィッド・クローネンバーグがくるからカメラマンやってくれない?」と声をかけてくださったんです。その時の写真が採用されて、他の映画配給会社からも依頼が来るようになったんです。お付き合いは何年経っても変わることなく、ある時はウッディ・アレンのドキュメンタリー映画を撮った監督のインタビューのためスタジオに入ったら在職時代の先輩がいらして、数10年ぶりの再会を喜び合いました。他の映画祭でも上司だった方が「元気だった!?」と気さくに声をかけてくださったり。異国の地でフリーで仕事なんて不安定ですよね。それでも映画という世界で繋がっている、守られていると感じるんです。

     

    帰国して一番やりたいことは一般の方を撮ること
    Kazuko Wakayama 若山 和子帰国後も映画祭の仕事は続けるつもりです。長くやっている仕事だし、短い時間で心のやりとりができた時の写真は手応えがある。ブラッド・ピットや浅野忠信さん、オダギリジョーさん、宮崎あおいさん……たくさんの俳優さんを撮らせてもらいました。映画祭は5分や10分しか撮影時間がないことが常。その中で縦位置、横位置、バストアップを押さえ、さらにその方の内面が見えてくる写真を撮りたいと思っているので、すごく難しいんですが、映画好きであったことや現場の空気を読む日本人特有の気質、そして語学力が強みになったのかも。通訳の仕事もしているので交渉力やコミュニケーション力もつきました。でも、日本に帰国して一番やりたいことは個人ポートレートを撮ること。実は、娘の幼稚園の卒園アルバムは私が撮影したんです。ストロボを持って行き、18人ぐらいの園児のポートレート。それがすっごく楽しくて。やっぱり子供達が生き生きと笑っている姿っていいですよね。自分が母親になってからとくに子供を撮ることに夢中になりました。私の写真を通して、子供達がどれだけ輝いている存在かということを感じてもらえるような、そういう写真を撮りたいと思っています。

     

    Kazuko Wakayama 若山 和子Photographer
    Yukiko Kojima
    小島 由紀子
    写真家。フランス語通訳/翻訳家。写真の専門分野は映画人、有名人ポートレート、音楽祭、ファッション、子供、食、オブジェなど。過去の掲載誌は朝日新聞、読売新聞、北海道新聞、Cut、SWITCH、CREA、TITLE、GQ、 ELLE japon、FIGARO japonほか多数。2013年4月より日本に拠点を移し、個人ポートレートの撮影も受け付ける。『ATELIER MIYAZAKI』(本誌P42)のスタッフとしても活動予定。お問い合わせ・ご予約はHPから受付。
    www.kazuko-wakayama.com

     

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